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読書:おとなの進路教室。(山田ズーニー)

 先日の、『あなたの話はなぜ「通じない」のか』に引き続き、山田ズーニーさんの著書を読んだ。

 

sundy1987.hatenadiary.jp

 念願だった仕事に就くことはできたものの、うまく成果を出せないともがいていた。人間関係にも恵まれたが、圧倒的にレベルの低い私はチームの足を引っ張ることも多く、悩みすぎて周囲にヘルプを出せず、その差を乗り越えることができなかった。最終的には離職を決断し、現在は次の仕事を探している。

 

 当初は仕事のレベルを上げることでいっぱいいっぱいであった。しかし、数年来の積み重ねによるそれらの差を埋めることは限界を感じた。周囲に助けてもらわなければ一人前の仕事のできないと考えたものの、レベルが低すぎて、困っていることがなにかも伝えられない。生まれて初めて、自分のコミュニケーション能力の低さに思い悩み、色々ともがいてきた。やがて、そういった努力さえも限界に達し、離職に至った。取り急ぎたまった想いや感情を吐き出そう、立ち止まって自分を見つめなおそうとなったのはこの1月ほどである。短歌やブログを作ったり、またたくさん人と話し、本を読むようになった。

 

 匿名で、しかも仕事は関わりの内容な遠回りの自己表現達であったが、お蔭で私の頭によぎる霧を少しずつ取り除いてくれた。そして、クリアになってきたのは、そもそも「念願」だった仕事は、本当に私の「想い」であったのだろうかということであった。しかし、そんなやりたいことを選べる立場ではない私には、その想いを出すことすら憚られた。次の仕事を見つけなければならないのであるが、私自身は「何もできない」存在であるのに、何をしたらいいのであろうという不安で一杯であった。夢を膨らませることだけでモチベーションにするのは年齢的に限界なのではないか。何の実績もない私が今から仕事を探しても、給与が下がるのではないか。そんな不安でいっぱいで、次に何をするかを考えることすらとても怖かった。だからこそ、この「おとなの進路教室」も現在の私にぴったりの一冊ではあるが、あまりに直球であるが故にしばらく読むことはできなかった。

 

 しかし、最終出社日に改めてチームに会ったとき、周囲の笑顔によって、その最後の霧も少し晴れる兆しを見せてくれた。実は今の仕事が向いていなかった気がすると打ち明けた時に、チームメイトは「そう思えたのはとてもよかった。次も頑張ってね。」と言ってくれたのだ。教えてもらったことに恩返しするほどの実力もなかった私に対して、そのように言って貰えたのはとても嬉しかった。

 

 私がこの「おとなの進路教室。」をきちんと手に取ることができたのは、そこからまた数日経ってのことであった。目覚ましをかけているにも関わらず十時間以上寝て、さらに昼寝をする数日であった。殆ど食事はしていない。そこから、何をするにも数倍のスピードをかけてようやくたまった家事をこなし、最後の床掃除をしながらこの本を読んだ。

 

 山田さんの著作はどれも読者の中の秘めたる力に対する希望に根差している。前回、読んだ本も読者の中の考える力、伝える力を一心に揺さぶる程の強い希望に満ち溢れていた。読んだ後にはたくさんの言葉が私の中からあふれてきた。本著も同様である。しかし、テーマは社会人に向けた進路である。ここで新たに伝えられていた願いは「夢を追いかける」力であった。

 

 印象的であったページはいくつもあり、この本も付箋だらけになった。しかし、最も私に刺さったのは『「くずれ」ない行き方』というエッセーであった。著者が会った、夢を途中で諦めたにも関わらず、その想いにとらわれている「学者くずれ」とのエピソードが書かれている。強い問題意識はあるものの、夢を途中で諦めたが故に、その問題意識に対する自分なりの回答は得られていない。それでも問題意識故に、周囲に対して噛みついてしまう。さらに、夢をあきらめた挫折感から、その噛みつきは問題解決に向かうのではなく「怨み」を晴らす方向に行ってしまう。このような人は実はたくさんいる。そのような人物に対する著者のメッセージは明快だ。その夢がかなう、またはかなわなくても卒業できるまで、夢を追いかけるべきではいかと。

 

 ここ数カ月、自分自身ができることは何もなく、何かを目指すこと自体が間違いではないかという疑心暗鬼にとらわれていた。本著の最初の方に、進路に迷った際の軸として①やりたいこと(Want)②できること(Can)③やるべきこと(Must)とあったが、とても①を追求できるような気持ではなかった。本著には著書の経験に基づいた仕事にまつわるエッセーが30詰まっている。読んでいるうちに、もう一度①②③全部を贅沢に追いかけてみようという気持ちにさせられた。

 

 

あなたの話はなぜ「通じない」のか (ちくま文庫)

あなたの話はなぜ「通じない」のか (ちくま文庫)

 

 

 

おとなの進路教室。 (河出文庫)

おとなの進路教室。 (河出文庫)