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How to connect the world? How to express myself?

読書

への字口の亀を見つけて、ジャケ買いした文庫本。一緒に暮らしていた亀を思い出しました。

初めて手に取った作者だったし、分厚かったので不安だったのですが、主人公のカメリが表紙通りに可愛くて、毎日読むのが楽しみでした。

 

のんびりしてるだけのイメージに描かれることが多い亀ですが、その実は好奇心旺盛で頑固な生き物。カメリも日々の生活で周りに声を荒らげることはありませんが、周囲の世界への疑問を忘れません。言葉を発しないカメリですが、世界を見続けるその眼差しこそが、おそらく、カメリの知ってる世界の愛し方なのでしょう。

 

また、カメリが見つめる「ヒトが去った後の壊れた世界」もとても魅力的。私たちが住む世界ととても似ているけれど、それらを構成するのは何だか生き物のような不思議な世界です。建物やコンクリートの代わりを務めるのは、ヒトデのような生物。テレビは植物のようにケーブルを伸ばして行きます。カメリを読む前は当たり前に感じていた世界が何かの犠牲によって生まれ、いつかは無くなってしまうのかもしれないとふと思われます。そう気付いたときに、私の中でもカメリのように、今ある周りの世界を忘れないようにしようと、世界を見る目が変わりました。

 

わかりやすいメッセージを伝えるわけでもなく、全てが理解できる世界観でもないのですが、全然違う世界にトリップさせてもらえ、ふっと心に余裕が生まれるような幸せな読書でした。

「本というのは小さな世界のようだと思う。小さな世界が自分の甲羅にくっついて、それで甲羅の中の世界がほんの少し大きくなる。」

 

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